趣味で絵を描く趣味で絵を描く

画家の指導は受けましたが、全くプロフェシッショナルではない楽々アート会会員の私が、絵画初心者のために蘊蓄を語ります。趣味で絵を描く仲間のサークル楽々アート会のページでは、会員募集中~我々が描いた絵画作品のギャラリーもあります。

5. 油絵を描く(3)
[中塗りをする]

先に述べたように、油絵は、絵の具を塗ってから次に塗るまでに1週間くらい間をおいて、塗った絵の具を乾かします。充分に乾いた画面に改めて絵の具を塗る前にルツーセ(スプレー)を吹きかけます。乾く前の色を取り戻し、絵の具を馴染みやすくするものです。
模写作品なら元の絵をコピーするように近づけてゆきます。風景写真を元に描いているとしたら、ここはこんな感じに受け取れるから、こう表現しようとか、こんな絵にしたいという理想に向かってどんどん描き込んでゆきます。
実のところ終わりはありません。自分が描きたいものを表現できたと納得したときが完成ではないかと思います。完成、と思ってもしばらく壁に掛けて眺めていたら描き足したい部分が見つかる…そんなこともあるかもしれません。

油絵は数メートル離れて鑑賞するものです。しかる後に近づいて技法を確認します。近くから見ると絵の具が無造作に付いてるだけなのに遠くからみるとそれが花瓶の光っている部分であったり…ホォーって感じの発見も楽しめます。…故に絵を描く場合も時々離れて見てみると気づく部分も多いです。
随分前にプラド美術館展で見たルイス・メレンデス[画家/1716-1780]の静物画です。質感が素晴らしい花瓶の色はもはや(細かすぎて)訳がわかりませんが光の表現はこんな↓感じです。
ルイスメレンデス ルイスメレンデス
参考になるかは別として有名画家の絵を鑑賞するのも悪くないと思います。

数メートル離れて鑑賞するもの…故に細かく描写された絵が必ずしも良い絵というわけではありません。写真というものがある以上、そこに表現がなければ技術はただの技術です。が、巨匠も若い頃には精密画のような絵を描いていたりします。ゴッホも然り、ですが、小絲源太郎(画家/1887-1978)も若い頃は細かく描写した絵を描いていますが、後に画風が変化して味のある絵を残しています~弟子の村田省三(画家/1929-2018)が受け継いでますね。ゴッホでなければ描けない絵=写真の如き精密画ではない、ってことです。朝ドラ「エール」に登場して戦争画を描いていた向井潤吉(画家/1901-1995)は逆に若い頃は前衛的な絵を描いてましたが、戦後は茅葺きやらの民家を描き続けました。
絵から何を受け取るか、そして感動するか、それは人それぞれです。思うに技術を見せるための技術は(観る者が己と比較して)“凄い”と感心させるもの、技術によって生み出された自分の創造物こそが(良くも悪くも)観るものに訴えかけるものなのではないか?と思います。模写はその“何か”をも写し取るかもですが、所詮贋作?なので単なるテクニックに感心して貰うものに過ぎないのかもです。ただし、模写などの習作は技術の向上に必要不可欠なものではないかと思います。

遠くにあるもの、近くにあるものの見え方も違います。青空の距離は?突き抜けて遠くにある感じを表現したいところです。奥の山と近くの山の違いは?ぼやける…ってだけでなく色の遠近感を表現したいですね。山々の色は遠くなるにつれて緑から青味がかってゆき、紫がかったような色になる(空の色に近づく)といわれています…観察してみてください。雲も日々観察すると面白いです。…どのように見えるのかがわかってくるかも知れません。

[仕上げをする]

キャンバスも額に入れると周囲の数mmが隠れてしまいますので、サインを入れる場合は、あまり落ちそうな部分に描き込んでも…ですね。注意しましょう。
サインは画面にある色で書くのが良いとされています。あまり目立たない方が良いかもです。…フィンセント・ファン・ゴッホ[画家/1853-1890]はあまり署名はしなかったらしいですが、自画像ではキャンバスの木枠の部分に書いています。随分前に行ったゴッホ展でこれを見つけた子供があわや触ろうとするのを母親が止めているのを見ました。
ゴッホ ゴッホ
街並みの看板に署名したり、停泊している船の名前にしたりしている人もいましたね。


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絵画の一歩絵画初心者のために蘊蓄を語るページ
1. 絵を描く
2. 油絵を描く準備
3. 油絵を描く(1)[下絵を描く]
4. 油絵を描く(2)[下塗りをする]
5. 油絵を描く(3)[中塗りをする]